受け継ぐって、同じ味をくり返すことじゃない。高知・帯屋町「ラーメン天馬」の中華そば。

ラーメン屋をやっていて、いちばんうれしい瞬間があります。

食べ終えた人が、ふと「おいしかった」とこぼしてくれたときです。

あの一言のために店を開けている。そう言ってしまってもいいくらいに。

その一言のために、僕らはずいぶん手を入れてきました。

だしの引き方も、かえしも、香味油も。

受け取ったときのままのところは、もうほとんどありません。

それでも「受け継いでいる」と思っています。

矛盾しているでしょうか。

僕らには、そうは思えないのです。

1978年から、ここにある一杯

天馬がこのまちで暖簾を出したのは、昭和53年のこと。

それから今日まで、いくつもの「いつもの一杯」がこの地下から運ばれていきました。

数えたことはないけれど、たぶん、気が遠くなるくらいの数です。

なぜ続いてこられたのか。

その理由を、ひとつに絞るのは、いまもうまくできません。

ただ、こうして長くここに店があること自体が、一杯のどこかに、ちゃんと効いている。

そんな気がしています。

<画像: 店頭のディテール>

受け継ぐって、同じことのくり返しじゃない

僕らが受け取ったのは味そのものというより、その一杯の「輪郭」でした。

このまちで、毎日のように食べられてきた中華そば。

その“らしさ”だけを残して、中身は一度ぜんぶ見つめ直す。

どこに旨味を置くか。どんな香りで迎えるか。

どの歯ざわりで、最後まで飽きさせないか。

割れた器を、金で継いで、また違う表情に生まれ変わらせる。

金継ぎのように古さを隠すのではなく、生かしていまの形に立ち上げ直す。

同じ味をなぞることだけが、"受け継ぐ" ではない。

輪郭は残したまま、いまの口に合うように、整え直していく。

それが、僕らなりの答えです。

一から、組み直す

いまの特製中華そば(900円)は、その考え方から生まれた一杯です。

もちっとした平打ち麺を持ち上げると、澄んだスープが麺にすっと寄り添って上がってくる。

レンゲでひとくちすすると、だしの香りがふわりと鼻に抜けていきます。

土台になるのは、鶏ガラと豚肉。

低温からゆっくり火を入れて、時間をかけて旨味を引き出していく。

そこへ4種の和だしを重ねて、奥行きを足していきます。

かえしも、香味油も、いまの口に合う一点を探して すこしずつ調整してきました。

派手な隠し味があるわけではありません。

毎日の地味な仕込みを、ただ丁寧に積み重ねていく。

その先にじんわりと満ちていく旨味があります。

一杯のつくりを、ひとつずつ書いていくと、それだけで長くなってしまう。

スープや具材のこまかい話が気になった方は、こちらでゆっくりどうぞ。

> 関連記事:また、地下へ降りたくなる。高知・帯屋町「ラーメン天馬」の中華そば。

不思議と、懐かしさに還っていく

おもしろいのはここからです。

これだけ手を入れて、ぜんぶを組み直したのに初めて食べたはずの人が

ときどき「懐かしい」と言ってくれる。

古さを演出したくて、やったことではありません。

ただ、いまの口においしいところを一つずつ探していった。

その先で、ふしぎと、どこか懐かしい場所に出てしまった。

" 懐かしいのに、新しい。"

たぶん僕らは、ずっと、その一点を作りたかったのだと思います。

受け継いだ僕らの、これから

派手に呼び込むような一杯では、ないかもしれません。

それでも、いちど食べた人が、また暖簾をくぐってくれる。

そして、もう一度「おいしかった」と言ってくれる。

その小さなくり返しが、この店を1978年からつないできたのだと思っています。

懐かしくて、あたらしい中華そば。

受け継いだ僕らにできるのは、それを今日も、ていねいに作り続けることだけです。

<画像: 厨房風景 or 仕込み風景>

## 店舗情報・アクセス店名:ラーメン天馬

  • 場所:高知市本町2丁目1-21 パームスビルB1F(帯屋町アーケードの一本南、おびさんロード沿い)
  • アクセス:ひろめ市場から徒歩1分/とさでん交通 大橋通駅から徒歩1分
  • 営業時間:昼 11:00 – 15:00 / 夜 17:00 – 21:00(ラストオーダー 20:30)
  • 定休日:なし
  • 電話番号:088-824-8767
  • Instagram@ramen_tenma (最新の営業情報・定休日はこちらで)

おまちを歩いていて、ふと思い出してもらえたら。

黄色い「天馬」の看板の、その先の地下でお待ちしています。

※営業時間・定休日は変わることがあります。お出かけ前に公式Instagramでご確認ください。

この記事について

  • 書き手:ラーメン天馬 三代目店主

1978年(昭和53年)創業のラーメン天馬を受け継ぎ、日々この一杯を仕込んでいる当事者が、自分の手と舌で確かめたことだけを書いています。

店の詳しい紹介はこちら → ラーメン天馬 TOP

  • 運営NULL.inc(お問い合わせ:088-824-8767)

店舗の所在地・営業情報は上記「店舗情報・アクセス」および公式Instagramが一次情報です。

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